中・大規模木造建築物の魅力 ① “みんなの森 ぎふメディアコスモス”
館内に入ると、ヒノキの香りが私たちを出迎えるように包んでくれる。まるで金華山(旧名稲葉山)で森林浴をしているようだ。「東濃檜(とうのうひのき)だな」とすぐにわかる。
「グローブ」と呼ばれる漏斗(じょうご)を逆さにしたような形状の半透明の傘が、直射日光をやさしい明りに変え、その下で読書をする人、勉強をする人、職員の人を照らす。
まるで、そこには知性や可能性を育む“小宇宙”があるようだ。
その上を木組みの“大宇宙”が覆い、ここから生まれるであろうイノベーションや発見を予感させる。
“みんなの森 ぎふメディアコスモス”は「知の拠点」としての図書館、「絆の拠点」としての市民活動交流センター、「文化の拠点」としての多文化交流プラザ及び展示ギャラリー等からなる、平成27(2015)年7月に開館した複合施設である。
伊東豊雄氏デザインのこの施設は、「根から知を 枝葉でふれあい花さかせ 明日への種を創り育む」という“施設理念”を見事に具現化しているように思う。
特に、屋根の構造であり、意匠でもある木組みは、120mm×20mm というヒノキ材を現地で積み重ね、構造的強度と意匠的空間を同時に併せ持つさまは、この施設の理念に合致していると思う。
YA(ヤングアダルト)エリアのグローブの傘の中では、多くの少年少女が思い思いの時間を過ごしている。
ふと、鎌倉市中央図書館司書の河合真帆さんの“つぶやき”を思い出した。
「もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。」
ここには、河井さんの“つぶやき”と同じやさしさや思いやり、あたたかさを感じさせられた。
「こんな図書館がもっと増えればいいのに」。
敷地面積 | 14,725.39 ㎡ |
建築面積 | 7,363.84 ㎡(本体棟+付属棟) |
延床面積 | 15,295.04 ㎡(本体棟+付属棟) |
建物高さ | 16.09m |
主な用途 | 中央図書館 |
市民活動交流センター(多文化交流プラザを含む) | |
展示ギャラリー、ホール | |
構 造 | 1 階・M2 階 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) |
2 階 鉄骨造、木造(梁) | |
階 数 | 地上2 階 地下1 階 |
設計期間 | 2011 年2 月~ |
工事期間 | 2013 年7 月~ |
設 計 | 株式会社 伊東豊雄建築設計事務所 |
施 工 | |
建築主体工事 | 戸田・大日本・市川・ |
雛屋 特定建設工事共同企業体 | |
電気設備工事 | 内藤・山一 特定建設工事共同企業体 |
空調設備工事 | 朝日・ダイワ 特定建設工事共同企業体 |
衛生設備工事 | 安田・濃尾 特定建設工事共同企業体 |
太陽光発電設備工事 | 山一電気 株式会社 |
<ぎふメディアコスモス>