東京散歩 ① (水道橋・市ヶ谷・四谷)

トラス橋JR東日本発行の“トランヴェール9月号”の「江戸城外堀を歩く」という記事を読み、急に思い立ってその一部を探索してみた。

“甲武鉄道”をご存じだろうか?
甲斐国(現・山梨県)と武蔵国(現・東京都)を結ぶ目的で、その国名の頭文字から“甲武鉄道”としたこの路線は、明治22(1889)年新宿~立川間の開業を皮切りに、明治37(1904)年飯田町~御茶ノ水が開通し、八王子~御茶ノ水間で運行されていた鉄道である。
御茶ノ水まで延伸した2年後の明治39(1906)年には国有化され、現在の中央線の基となった、総延長27.8哩(約45km)の鉄道である。
そんな甲武鉄道の時代から現役の『トラス橋』がある。DSC_1765
DSC_1763水道橋駅西口を出て、総武線の線路脇を飯田橋方面に向かうとほどなく日本橋川に架かる三崎橋の脇に架かる鉄橋がそれだ。
ドイツ ハーコート社製のトラス橋は色こそ違え、明治37年の輸入当時のまま、ひっきりなしに通過する銀色と黄色の車体を来る日も来る日も支え続けている姿に愛おしささえ感じた。
「結構華奢なのに頑張っているね」。

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市ヶ谷駅の改札を出て左折して、市谷橋を渡ると右側に“熱帯魚”の看板のある釣堀店の駐車場に入っていくと、『市谷門跡』の石垣がある。よく見ると、石垣を築いた大名や職工たちを識別するためと言われている“刻印”やあきらかに“石曳”のためではないかと思われる細工がしてある石があちこちにある。
それにしても、この幅(約60m)の堀を普請するにはどれほどの労力が必要だったのだろう。何年も故郷を離れ、粗末な生活の中でやり遂げた江戸時代の人々の尽力に唯々頭が下がる。その市谷橋の上を、何も気が付かず私たちは往来している。
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東京メトロ丸の内線の四ツ谷駅の1番線ホームを赤坂見附駅方向に歩き、ホームの端まで行くと都内最古級と言われるレンガ造りのトンネルがある。『旧御所トンネル』だ。
甲武鉄道時代のトンネルで、明治27(1894)年に掘られたもだそうだ。別名『御所隧道』と言われた。がっしりしたレンガ造りのトンネルに中野行の総武線が吸い込まれていく。当時の施工者たちは、100年以上経ってもこのトンネルが使い続けられることを想像していただろうか。

「スクラップアンドビルド」という言葉がある。住宅は約30年のサイクルで「スクラップアンドビルド」を繰り返している。
敗戦後の焼け野原に夜露を凌ぐだけでも良いバラック小屋を建て、高度成長時代以後、欧米からは「ウサギ小屋」と揶揄されながらも、精いっぱいの一軒家を建て、ようやく最近、住空間の性能を考えるようになり、「スクラップアンドビルド」の考え方は徐々に後退してきてはいるが、まだまだ足りない。
そんな日本の住文化だからこそ、真剣にどうあるべきなのかを追究しなければならないことを思い知らされる半日散歩でした。

2015年09月08日 | Posted in 雑感