4号特例をぶっ壊せ!! vol.1

このたびの熊本大地震で被災された皆様、また関係者の皆様、心よりお見舞い申し上げます。無題
人々の生命と財産を守るべき建物によって、尊い命が奪われ、財産を失い、失意と落胆の表情を浮かべる被災者の皆様の一日も早い復興をお祈り申し上げるとともに、私たちも最大限の努力と協力を惜しみません。

当グループは木造の構造の安全性や性能を根拠化することを主なる業務とする設計事務所です。
今、私たちは建築業界にいる人間として、自戒と反省の気持ちでいっぱいです。
なぜ、4つのプレートの境にあり、発見されているだけで2千以上の活断層帯がある日本で、住宅の地震に対する安全性の確認をほとんどしないまま、毎年何十万棟も建て続けていることを黙認し、“旧耐震基準(昭和56年以前)”の建物を放置してきているのだろうかと。

「4号特例」というバケモノ熊本1
建築基準法 第六条の三  には、
第一号若しくは第二号に掲げる建築物の建築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替又は第三号に掲げる建築物の建築に対する前二条の規定の適用について は、第六条第一項中「政令で定めるものをいう。以下同じ」とあるのは、「政令で定めるものをいい、建築基準法令の規定のうち政令で定める規定を除く。以下 この条及び次条において同じ」とする。
 第六十八条の十第一項の認定を受けた型式(次号において「認定型式」という。)に適合する建築材料を用いる建築物
 認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物
 第六条第一項第四号に掲げる建築物で建築士の設計に係るもの

噛み砕いて言うと、「2階建てや平屋の木造で造られた住宅は建築士が設計していれば、構造強度の審査が省略できる」という法律。この法律によって、「構造の安全性の審査が無い」イコール「構造の安全性の検討はしなくていい」という、間違った解釈がまかり通っている。つまり、構造計算(許容応力度計算)や性能評価(耐震等級3)による検討をしてない住宅は、住宅会社や設計事務所の過去の経験や勘によるもので、人生のうち最も長く過ごす“命を預ける場所”としては、なんの安全性の情報がないということです。
事実、2006年に、関東のパワービルダーの2階建て住宅が、耐震性の最低基準の壁量規定すら満たしていない住宅を約1,000棟も販売していたという事件が報道された。これは、氷山の一角と言われ、建売業者だからとか、地元の工務店だからとかと言う事ではなく、業界全体で間違った法解釈の元、安全性をないがしろにしてきたと言える。事態を重く見た国土交通省は、2009年12月までにこの“四号特例を廃止する(ビルなどと同じように構造の安全性を確認する)”と発表したが、、2016年の現在、改正されていない。つまり、只今現在も、この解釈のまま、建てられている住宅が多くあると言う事だ。
あなたは、初対面の技術者と称する人に「大丈夫」という言葉だけで、家族の命を預けられますか?
家を建てる時、または取得する時、あなたはデザインやシステムキッチンなどの設備には口をだし、ならば金もだしもするのに、家の前提条件(家族の生命財産を守る)に無頓着で良いはずがない。

「旧耐震性能の建物に住むのは命がけ、新耐震基準でも安心できない」図1
建築基準法(昭和25年5月24日法律第201号)は、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律であるが、その中の「耐震基準」は関東大震災の次の年の1924年(大正13年)、前身の市街地建築物法(大正8年法律第37号)の中で、世界に先駆けて日本で施行されました。その内容は1981年(昭和56年)に耐震基準が大きく改正されるまで、震度5程度の地震に耐えうる住宅という基準であった。
今回の熊本大震災では震度7の激震が2度も襲ったのだから、その建物に対する影響は想像を絶する。というのも、特にマグニチュード7.3の2度目の地震は、震度5(約マグニチュード5)の耐えればいいとした住宅に、建物の耐え得る基準の1000倍(31.62 × 31.62 ≒ 1000 ) ものエネルギーで襲いかかったのだから、「1度目の地震の時は、傾いただけだったけど、2度目で倒壊した」というのは、図3工学的には不謹慎だが、頷ける。
1981年(昭和56年)に耐震基準が大きく改正され、新耐震基準が誕生し、地震による建物の倒壊を防ぐだけではなく、建物内の人間の安全を確保することに主眼がおかれ『震度6強以上の地震で倒れない住宅』と変わった。
が、一部報道では、新耐震の建物は被害が軽微といった報道もあるが、東海大学の若い学生が2人お亡くなりなられたが、あれは報道で見る限り、旧耐震の建物には見えない。つまり、想像だが、前述のように、「何の検討も成されないまま」建てられたものではないか(法律上、壁量等が足りていれば問題ないが)。

繰り返される悲痛。「帰る家がなくなった」と呆然と立ち尽くす人々に私たちは傍観者でいられるだろうか。
報道では、「木造の建物が地震に弱い」かのように言われる。
そうではない、安全性の最低基準で建てられていたり、またはそれさえもしていない建物があまりに多い。
“努力義務”などといった、行政の施策による変化を待っていても、なにも期待できないし、新たな不幸がどこかでまた発生することは明らかだ。

私たちエムグループは、『4号特例をぶっ壊せ!!』を堂々と掲げ、設計を通して、1棟でも多く「安心して暮らせる住環境」を提供できるように展開して参ります。

vol.2 より、具体的な展開、方法などを公開します。

2016年04月26日 | Posted in 私感・直感