1kgは何N(ニュートン)?

最近、偶然にも何人かの人に「1kgは何N(ニュートン)ですか?」と質問を受けた。
夏休みも始まった事ですし、ちょっぴり“理科”するのもいいかなということで、「今更聞けないこと」を不定期にわかる範囲で、解説します。

◆ 1kgの金塊 どこで量っても重さ1kg?
皆さんの前に1kgの金塊があるとします。今日の相場で4789円/gですから、478.9万円という大金です。これが量る場所によって1gでも変わったら大騒ぎです。
でも、想像してみてください、無重力状態の宇宙ステーションで1kgの金塊がどうなるかを。当然、ふわふわ浮いているはずです。一方、地球上で1kgの金塊を持ちあげてみます。「重っ!!」と思わず叫ぶと思います。それは1kgの金塊に、重力がはたらいているからです。地球が1kgの金塊を引っぱっている、とも言えます。この地球が引っぱる力の大きさを「重さ」というのです。「重さ」とは、「重力」なのです。この力を表す単位がN (ニュートン)です。
重力は重力加速度に比例して変化します。地球上を1とした場合、月では6分の1、太陽では28倍の重力がかかり、「重さ」はその場所で変化します。地球の重力加速度は9.8 (m/s²)ですので、下式になります。
重さ (N)=質量 (kg)×9.8 (m/s²)

理科の世界では、「質量」と「重さ」を明確に区別しています。「1kgの質量の金塊」であって「1kgの重さの金塊」ではないのです。
質量」は「場所によって変化しない、物体そのものの量」で、その単位がt(トン)kg(キログラム)となります。
重さ」とは、「その物体に働く重力の大きさ」ということになります。ですので、私たちが普段「1(kg)の重さ」と言っているのは、質量1(kg)の物体に作用する力(すなわち、9.8(N))のことです。無重力では重さが0(ゼロ)Nとなります。
ということで、Nは「重さ」、kgは「質量」の単位ですので「1kg=何N」と換算することはできません。

◆ てんびん秤(はかり)とバネ秤(はかり)
月の重力加速度は地球の6分の1ですので、バネ秤で量ると地球上で1kgの金塊はたった167gを指します。同じようにてんびん秤で1㎏の金塊と1㎏の分銅で釣り合うかやってみましょう。直感的にはバネ秤で167gになったのだから、釣り合うはずがないと思うかもしれませんが、分銅にも同じ重力加速度がかかっているので、「重さ」は一緒で釣り合うのです。月で金を売る場合はバネ秤ではなくて、てんびん秤で計量しないと、大損をすることになります。
面白いですね。
地球上でも、赤道に近くなるほど、高度が高くなるほど重力加速度が小さくなります。例えば、札幌の重力加速度は9.805m/s2、沖縄の那覇の重力加速度は9.791m/s2の重力加速度になります。単純に沖縄は札幌の 99.86%の重力加速度となり、札幌で1kgの金塊は沖縄では998.6gで1.4gの差となります。バネ秤で取引すると、4789円/g×1.4g≒6700円程、売り手か、買い手かで、損したり、得したりすることになります。何か、落語の「時そば」の理科版ような話ですが、私たちがいかにアバウトな中で生きているかわかるような気がします。
体重を気にしている人は、赤道直下か、エベレストの頂上で量れば、少し痩せた数字になるっていうことです。でも、そんなことをしても意味がないことはもうお分かりですよね、「質量」は変わりないのですから。

2018年07月26日 | Posted in 構造 初歩の初歩