合間の贅沢 vol.6  京都 伊根の舟屋(いねのふなや)

“舟”が主人公の家がある。
“船”ではない、“舟”である。
その2階には、間借りするように、“若いモン”が住むという。
かつて、東北地方などに、「中門造り#1」の農家屋で、馬や牛と暮らしていたように、ここでは今でも、海を愛し、舟とともに生きる集落である。
舟屋は伊根湾にへばりつくように建てられていて、山側に乗用車1台が漸く通れるくらいの道を隔てて母屋がある。以前は傘をさしてすれ違えなかった程の道であったという。

「重要伝統的建造物群保存地区に指定されているので、勝手に建物をいじれない」と亀島丸の船長がいう。
ノスタルジーに浸りに残された建物群に紛れ込むのも楽しい。
しかし、ここは“今”なのである。「今の生活の中に、我々がお邪魔する」といった遠慮がちな旅も楽しい。

それにしても、舟屋の1階部分は完全な“筒抜け”状態で、完全なピロティ形式と言える。「この辺りは、地震がなかったんだろうな」なんて思いながら、舟に揺られていると並走していたカモメが何か言いたげに僕を睨んでいた。

#1母屋(おもや)に中門とよばれる突出部をもち、先端に馬の出し入れ口を設けて内部を厩(うまや)などにした建物形式

2018年05月04日 | Posted in 建物探訪記