4号特例をぶっ壊せ!! vol.4

『木』を考える vol.1-1 =「木」は地震に弱いのか?=
ある調査によると、「もし一戸建ての住宅に住むとしたらどんな家に住みたいですか?」という問いに、約8割の人が「木の家に住みたい」と答えているそうです。それは「自然素材で暖かみがある」「日本の気候風土にあっている」「健康に良い」などの理由からです。
一方、ネガティブなイメージとして、「地震に弱い」「火に弱い」「耐久性(腐る、白蟻害等)に劣る」があります。

先日、ある講演会で「木・鉄・コンクリートのゲージでマウスの繁殖実験をしたところ、圧倒的に木のゲージが生存率、繁殖数が良かった。だから木の家は良い」と言われている方がいました。果たして、そうなのでしょうか?体温を奪われやすい(熱伝導率が高い)鉄やコンクリートと木では同じ環境とは言えず、これはある種、意図的に結果を導き出す実験だといえます。私も、「木」は大好きですが、このような「都市伝説」的なイメージではなく、「木」を見つめ直したいと思います。

=「木」は地震に弱いのか?=
「木」の話の前に「地震」をおさらいしておきたい。
「地震」の規模を表す単位として“マグニチュード”と“震度”は一般的である。熊本地震(2016年)で大きな被害となった、マグニチュード7.3、最大震度7の地震は記憶に新しい。実はもう一つ、gal(ガル)という単位がある。gal(ガル)は「加速度」のことで、地震では最大加速度をその地震の規模とします。
「加速度」もおさらいします。
「加速度」とは単位時間あたりの速度の変化量(率)のことです。???
簡単に言うと「加速度」は速度を時間で割ったもので、単位は [m/s2](メートル毎秒毎秒)や [km/h2](キロメートル毎時毎時)です。たとえば 3m/s2 といったら1秒間当たり 3m/s ずつ速度が増すという意味です。地震の場合、その最大値をgal(ガル)で表します。
gal(ガル)は大きいほど揺れが激しいことを示しますが、必ずしも震度や被害とは直接結び付かないとされています。これは、建物などの被害は地震の周期や継続時間に影響を受ける面が大きいという理由からですが、とは言え、地震時に建物に働くの大きさは,その物体の質量(重さ)と地震により生じる加速度の「積」となることから,gal(ガル)は建物の安全性の一つの尺度となります。
さて、熊本地震(熊本県大津町の自治体震度観測点)の最大加速度はいくつかというと1791gal(ガル)である。
あれ、れ、れ! 耐震等級3で600gal(ガル)がクリア基準だから・・・
そうです、「木」が地震に弱いのではなく、この想定基準より大きな地震の場合、どんな構造の建物でも倒壊の恐れがあるということです。

「木」は優秀な構造材
前述で“地震時に建物に働くの大きさは,その物体の質量(重さ)と地震により生じる加速度の「積」となる”と言いましたが、建物の重さは重要です。言い換えると「重い建物ほど地震の影響を受ける」「よって、柱や梁を大きくしなければならない」となるわけです。鉄やコンクリートはとても強い素材と言えますが、共通して重いといえます。同じ重さでの材料強度を『比強度』といいますが、「木」「鉄」「コンクリート」で比較してみます。(右図)
引張比強度で「木」は「鉄」の2.25倍、「コンクリート」の225倍
圧縮比強度で「木」は「鉄」の2.1倍、「コンクリート」の9.5倍
曲げ比強度で「木」は「鉄」の15.4倍、「コンクリート」の400倍となり、圧倒的に強い、優秀な構造材と言えます。言い換えると、少ない(軽い)材料で地震などに強い建物が造れると言うことになります。
なぜ、「木」は軽くて強い素材かというと、中空のパイプのような細胞が集まった“ハニカム構造”だからです。スキージャンプの板や段ボールなど、重くなると不利になるものは“ハニカム構造”になっていることでも、理にかなっていると言えます。
「木」は地震に弱いのではなく、むしろ、地震に強い素材といえる。
ただ、それを正しく使うことが大事と言うことになります。
既報の通り、木造の2階建までの住宅は“4号特例”という特例措置で、「建築士が責任をもって設計すれば、構造の安全性の審査が免除される」という法律があり、多く(大半?)の住宅が安全性の根拠もなく、建てられているという恐ろしい現状があります。
皆さんは、「おいしいから」と言って、賞味期限切れの食品をマーケットで買いますか?
マイホームとなると、いきなり夢心地になり、安全性などは「お任せ」になってしまう。
建物は私たちの生命・財産を守る大事な使命があります。ですので、契約の時に一言「安全性の根拠を見せて」と言ってほしい。いや、工務店、設計事務所の方から指し示すかどうかも決定基準の一つにしてほしい。
国の法律は最低守らなければいけない決まり事です。“4号特例”を利用して住宅を建てても、違法ではありません。
残念ながら、そこから先は、自己責任となります。

2018年04月19日 | Posted in 私感・直感