「基準をクリアした」 それでいいのか? vol.2

地震発生分布図この10年で地震による住家全壊は1万棟(東北地方太平洋沖地震被害を除く)以上
2007年~2016年の10年間に震度6弱以上の地震は14回発生している。
多くの人命が失われ、傷つき、そして住む場所も無くした。
あの2011年3月11日の
東北地方太平洋沖地震による住家に対する被害はその大半が津波によるものと報告されているので、それを除いても10,902棟全壊している。

建築基準法
(目的)
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。日本付近で発生した主な被害地震(6弱以上)2007年~2016年

耐震性能の『最低の基準』とは?
「建築基準法施行令第88条第3項に定めるもの」としていますが、これは「建物が壊れても構わないから、人命は失われないように(倒壊等防止)する」地震の大きさは「気象庁の震度階で震度6強から7程度」(国交省解説)となる。
つまり、大規模な地震が起こった時、「住んでいる人の命を守ることは出来ても、住宅においては地震の後には引き続き住むことが出来ない住宅レベル」(即時倒壊しないレベルの住宅)ということになる。
耐震等級は基準法の「最低の基準」レベルであり、家族の生命は守る(これも怪しい)が、「家」という財産は失う可能性があるレベルということだ。
一方、耐震等級2・3は家族の命は守ることは当然の上、大地震後も軽微な修繕で済み続けることができ、財産を守ることができるレベルということになる。(2016年の熊本地震の際、耐震等級2を取得していた住宅2棟が倒壊したことが報告さえれている。耐震性能を上げることが全てを担保するわけではない。)

生命と財産を守る費用
耐震等級「最低の基準」レベルでない住宅に住む方法の一つとして、品確法(住宅の品質確保の 促進等に関する法律)の耐震等級取得がある。2012年度の耐震等級取得利用状況は木造で建てられた住宅389,130戸中、75,329戸(耐震等級1を含む)と約19.3%にとどまっている。約31万戸もの住宅が全て「財産が守れない家」とは言わないが・・・、これが現実である。

「耐震等級2・3を取りたいけど、何百万円もコストアップする、と工務店に言われた」という話をよく聞く。
DSC_0231_00159-2これは、全くの嘘だ。基準法レベルから「耐震等級2」を取得するとき、大きく変わるのは「基礎」と「耐力壁の性能と量」の2点だ。住宅用の「基礎」は35坪程度の家で50万円(当事務所調べ)程で、例えば性能アップのために倍かかった(そんなことは絶対ない)としてもプラス50万円。「耐力壁」の性能をアップし、量を増やすには、材料費(筋交い・構造用合板等)と施工手間賃でせいぜい10万円(当事務所調べ)ほど。つまり、いくら多く見積もっても60万円で、大地震後も住み続けられる家になるのだ。
ちなみに、耐震等級2を3に上げた場合、7万円(当事務所調べ)にしかならない。現状、耐震等級取得の90%以上が最高等級の「3」である。
私たちは、全棟耐震等級3を取得することを勧めている。世の中に、「自由設計」と言って憚らない方がいる。が、「設計」は一定のルールの中で成り立つもので、「何でもあり」ではない。勝手気ままに作りたいなら、それなりの覚悟が必要である。ましてや、「最低の基準」を守っていれば良いっていうものではないのが事実なのだから。
2018年01月26日 | Posted in 木造・木質建築